たったひとつの冴えたやり方、読後

by Saito 2015年01月12日

以前に書いた「たったひとつの冴えたやり方」というジェイムズ・ティプトリー・ジュニアのSF小説を読み終えたのですが、これも以前書いた気がしますがこの表題作は「The Starry Rift」という連作中編集の3作品のなかの最初の物語で、翻訳版のタイトルなんですね。
このタイトルに惹かれて読み始めたのですが、SF小説をあまり読んでこなかったのもあり中々読み進めることが出来ず結構時間をかけて読み終えました。内容はというとリフトと呼ばれる宇宙のある星域のまわりで起こったヒューマンと呼ばれる種族の3つの物語という形で、どれも面白く読めたのですが私的には3作品目の「衝突」という物語が一番好みで楽しく読めました。ただ3編を読み終えた後に(私が読んだのは文庫版だったのですが)この作品の翻訳をされた浅倉久志さんという方のあとがきがあるのですが、それに一番衝撃を受けた様な気がします。SFファンの方には周知の事実かも知れませんが、ティプトリー・ジュニアの人生そのものと言いますかそういうものと絡めてまたこの作品を振り返らざるを得ない作りが、そのあとがきを含めてひとつの作品として完成しているような気がしました。そう思ったのは初めてかも知れませんし、久々に心から震える瞬間がそこにはありましたね。
ご興味をもたれた方はぜひご自身で体感された方が良いと思いますのでその内容についてはあまり触れませんがひとつだけ、この作品がティプトリー・ジュニアの遺作だという事、そしてなぜ翻訳版のタイトルがこれになったのかの疑問も晴れた様な気がします。
「たったひとつの冴えたやり方」…確かにそうなのかも知れません。